性感染症(性病)検査の技術は日々進歩しています。 学会のたびに新しい方法が発表され、それをベースに研究を進めています。
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技術情報 〜主な研究・論文紹介〜
【クラミジアに関する研究】

1.Cytomorphologic and immunocytochemical studies of
   chlamydial infection in cervical smears.


 Chlamydia trachomatis 感染に特有な封入体の形態を明らかにし、特徴的な
  形態を星雲状封入体(
Nebular inclusion)と命名した。

                          Shiina, Y., Acta Cytol 1985;29:683-691.


2.女性性器における Chlamydia trachomatis 感染の細胞診と
   Micro Track 法による診断


 1,096名の蛍光抗体法の成績は25例(2.3%)が陽性で、地域別にはS市が
  8/360(2.2%)、Y市 11/493(2.2%)、O市 6/243(2.5%)と地域間での差はみられ
  なかった。Micro Track 法陽性25例の年齢分布は30歳までが 1/18(5.6%)で
  31〜40歳 10/331(3.0%)、41〜50歳 11/429(26.%)、51〜60歳 3/248(1.2%)で
  あり、若年者での陽性率が高かった。
  今回の検索では本邦においても欧米とほぼ同じC.trachomatisの潜在罹患者の
  存在が示唆された。また、Papanicolaou標本でC.trachomatis感染を診断する為
  には、NIの検出はもとより、化生・修復細胞や幼若リンパ球の出現および一部の
  粘液に沿ってのみ球菌状のものが蜜在する所見は、副所見として重要と思われた。

     椎名 義雄、飯島 淳子、他 日本臨床細胞学会雑誌25(6):1035-1042,Nov.,1986

3.Micro Track法による女性性器からの
                   Chlamydia trachomatisの検出


 本研究は本邦婦人のChlamydia trachomatis(C.trachomatis)の罹患状況を明らか
  にする目的で、産婦人科外来を訪れた2,559名の頸管スミアにMicro Track法を用い
  C.trachomatisの検出を試みた。
  その結果、107例(4.2%)が陽性を示した。職業別陽性率は学生(14.1%)、風俗関連
  営業従事者(10.1%)、自営業者(5.9%)、会社員(5.5%)、主婦(2.4%)で、学生や風俗
  関連営業従事者で高い傾向を示した。
  年齢別陽性率は20歳までが9.4%と高く、その後は21〜30歳(4.9%)、31〜40歳
  (3.1%)、41〜50歳(2.1%)、51歳以上(1.1%)と、加齢と共に減少傾向を示した。
  以上の成績と我々が既に報告した1,096名に対して検索した成績(検出率2.3%)より
  本邦30歳以上の婦人からは約2〜3%の割合でC.trachomatisが検出されるものと
  思われる。

             椎名 義雄、武田 敏、岩倉 理雄 感染症学雑誌60(11):1240-1247

4.Detection of Chlamydia trachomatis by
       Papanicolaou-Stained Smear and Its Limitations


 クラミジア感染細胞の形態を分類した。頸管円柱上皮細胞には特有な封入体の
  変化がみられた。

                              Yoshio Shiina, M.T.,Ph.D.,C.M.I.A.C


【HPVに関する研究】

1.In situ ハイブリダイゼーション法による男女尖圭コンジローマ
   組織中のHuman Papollomavirus DNAの検出と型同定

 男女泌尿生殖器に発生した57例の尖圭コンジローマの病理組織について、ビオチン
  標識したHPV DNA 6/11、16/18、 31/33/35型混合プローブを用いたin situハイブリ
  ダイゼーション(ISH法)によりHPV DNAの存在状態を調べた。
  1)HPV DNAは、対象とした男性42例中36例(85.7%)、女性15例中14例(93.3%)、男女
  合計57例中50例(87.7%)の尖圭コンジローマ組織に検出され、これらはいずれもHPV
  DNA 6/11型であった。
  2)尖圭コンジローマ組織中でのHPV DNAの局在は、大部分のKoilocytosisなどの
  HPV感染に伴う形態変化を示す部位と一致し、局所性に見られた。しかし一部症例で
  は散在性あるいはKilocytosis
の変化を示さない細胞にもHPV DNAの存在を認めた。
  3)50例中1例により男女泌尿生殖器の尖圭コンジローマ組織に、散在性にHPV DNA
  が検出された。
  以上、ISHにより男女泌尿生殖器の尖圭コンジローマ組織より高率にHPV DNA 6/11
 が検出され、その局在は従来から知られている形態変化とほぼ一致したが、
  一部Koilocytosis等の形態変化を示さない部位でもHPV DNAが検出されるなど、形態
  診断上の問題点が示唆された。
              計良 恵治、椎名 義雄、他 日本性感染症学会誌 Vol.2、No.1

2.子宮頸部尖圭コンジローマ組織における
           
Human Papollomavirus DNAの局在

 今回われわれは、Vira-Type Human Papillomavirus Tissue Hybridization kit
  (東レ、フジバイオニクス)を用いて16例の子宮頸部尖圭コンジローマにおける
  HPV-DNA の検索を行い、以下の結果を得た。
  1.子宮頸部尖圭コンジローマ 16例中9例に6/11型 DNAが検出された。
  2.HPV-DNA陽性 9例中5例は酵素抗体法で陽性であった。
  3.HPV-DNAの上皮細胞層内分布は、上皮細胞層上 1/3に陽性所見を認めた
    もの 3例、上皮細胞層上2/3に陽性所見を認めたもの4例、全層にわたり陽性
    所見を認めたもの 2例であった。
  4.Kiolocytosis,dyskeratosis,parakeratosis は、HPV-DNA 陰性例に比べ
    陽性例に頻度が高かった。

               堀内 文男、椎名 義雄、他  杏林医会誌 22(2):89-93 1991

3.Human Papollomavirus感染細胞の核所見の解析

   Human Papilloma virus(以下HPV)感染を細胞診で診断するため、核異常細胞の
  核所見を形態学的に分類し、おのおののHPV capsid antigen 陽性頻度を検索した。
  capsid antigen 陽性の異形成 10例に出現した核異常細胞の核所見で、capsid
  antigen 陽性率は均質無構造が33.2%、封入体様所見が48.4%であり、細顆粒状の
  2.4%や粗顆粒状の1.2%より高値を示した。また、封入体所見を呈した中で
  chromatin増量核は50.3%、褐色核は56.4%と高値であった。

   郡 秀一、椎名 義雄、他 J.Jpn.Soc.Clin.Cytol.33(6):1079-1085, Nov.,1994

4.ヒトパピローマウィルス感染例における
              奇怪裸核の出現意義について

  子宮頸部 Human Papilloma virus(以下HPV)感染例の細胞診に出現する奇怪裸核
  (bizarre stripped nucleus,以下BSN)の出現意義について細胞形態学的、免疫組織
  細胞化学的に検討した。
  (1)BSNの細胞形態学的所見は裸核として出現し、核は分葉状、多核様の奇怪な形態
    を示した。クロマチンパターンは網目状、融解状構造の中に粗大なクロマチン
    凝集塊を伴っていた。核小体は認められなかった。
  (2)BSNは総計24個出現し、HPV-CAは23個(95.8%)が陽性を示した。
      (略)
  以上のことからBSNの出現はHPV粒子が多数存在するHPV感染症を示唆する
  新たな細胞所見と考えた。
       郡 秀一、椎名 義雄、他 日本臨床細胞学会雑誌 36(2):151-156,1997


5.In situ hybridization法を用いた食道生検組織における
        Human Papolloma virus DNAの検出

  食道生検組織標本79例を対象に、HPV DNAの検出を試みた。さらに症例別に HPV
  DNAの頻度ならびにDNA Typeを検索し、食道病変との関係を考察した。
  HPV DNAは 79例中11例(13.9%)に検出され、その内訳は16/18型が 2例(2.5%)、
  31/33/51型が 9例(11.4%)であり、6/11型は検出されなかった。
  扁平上皮癌は 40例中6例(15%)(16/18型 1例 31/33/51型が5例)に認めたが、
  癌組織には認められず、周囲の異形成部位のみに認めた。
  以上の成績から、31/33/51型は食道上皮に高い親和性があり、異形成病変の発生
  になんらかの役割を果たしている可能性が示唆された。
               郡 秀一、椎名 義雄 杏林医会誌 27(4):513-518, 1996


【ヘルペスに関する研究】

1.単純性ヘルペス感染細胞の免疫細胞化学的研究

  細胞学的に herpes simplex virus(HSV)感染と診断された患者から得られた婦人科
  スミアに対し、細胞学的・免疫細胞化学的観察を行った。
  細胞形態学的にHSV感染が疑われた細胞の核が好塩基性小顆粒を伴う空胞を含む
  事が重要であった。さらに Papanicolaou標本において、重積性や濃染性核の存在も
  HSV感染の診断のために無視すべきでないと思われる。
     椎名 義雄、飯島 淳子、他 J.Jpn.Soc.Clin.Cytol.25(4):676-682, July,1986
 


【細菌性膣症に関する研究】

1.子宮膣部擦過スミアにおける Clue cell 出現の意義に関する研究

  子宮膣部擦過標本 8,824例を用い、本邦婦人における clue cellの出現率、年代分布、
  細胞診クラス別出現率、好中球の量および性周期との関係について検索した。
  その結果、clue cellは 300例(3.4%)に出現し、年代別には10代(15.4%)、20代(7.2%)、
  30代(2.7%)、40代(4.5%)、50代(2.0%)、60歳以上(0.3%)と加齢とともに減少する傾向を認め
  たが、季節的変動はみられなかった。
  以上の成績より、若年婦人やクラスVと診断されたHPV感染者で出現頻度が高いこと
  から、性行動との関係が示唆された。また、clue cellの出現は、膣の正常細菌叢の乱れ
  を反映したもので、その数の多少にかかわらず細菌性膣症の予備軍として注目すべき
  であり、臨床医への報告は意義あるものと考える。

         椎名 義雄、小林 勲、他 J.Jpn.Soc.Clin.Cytol.34(1):1-6, Jan.,1995

2.Gardnerella vaginalis 感染における Clue cell の
                      診断的意義と治療の関する研究


  婦人性器のGardnerella vaginalis感染における clue cell 出現の関係、帯下の臭気、
  治療効果およびGardnerella vaginalisの薬剤感受性について検索した。
   Clue cell 出現例のGardnerella vaginalis の分離率は 98.1%であった。帯下の悪臭は
  clue cellを認めた 34.3%に認められた。
   以上の成績より clue cell はGardnerella vaginalis感染の診断や治療効果測定の
  指標になり、膣分泌物に clue cellを認め、悪臭を伴うケースは適切な薬剤による治療と
  follow up が必要と思われる。
         小林 勲、椎名 義雄、他 杏林医会誌 27(2):177-184, 1996





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